化学肥料を使わない自然農法の土地の肥やし方

化学肥料を使わない自然農法の土地の肥やし方

自然農法の定義はがっちりと定まってはいませんが、一般農法の様な、合成農薬や化学肥料を一切使用せずに、出来る限り自然のままの環境、又は昔ながらの農法で農業を行っていくことといえるでしょう。

自然農法を行うと、環境にもよりますが、最初のうちは害虫に苦しんだり、農作物が病気になってしまうこともでてきます。

でも、1番苦労する可能性が高いのが土づくりです。

化学肥料を使えば、ある程度の土で、適した植え方をすれば農産物はすくすく育ちます。(硝酸態窒素などの弊害がありますが…)

でも、化学肥料を使わない自然農法であれば「発芽しない」「成長しない」ということが往々にして起こりうることです。

発芽しなかったり、成長しないということは、基本的にはその場所(畑)に、農産物が育つ環境に適していないということで、気候や水はけ等の問題もあるかもしれませんが、1番可能性が高い原因は土が肥えていないということです。

土に栄養分が少ないと、農産物はしっかりと成長してくれません。(だから一般農法では化学肥料を与えるのです。)

自然農法で農産物をつくっていくことには、よく肥えた土づくりが必要不可欠なので、化学肥料を使わずに、土づくりを行っていく方法をご紹介していきます。

そもそもなぜ肥料が必要なのか

自然農法 土づくり チップ

土づくりの前に、そもそもなぜ農業には肥料が必要なのでしょうか?

辞書で「肥料」と調べると、「土を肥やし植物の育ちをよくするために、土地に施す物質で、窒素・リン酸・カリの3要素のどれかを植物が吸収しやすい形で含んでいる。化学肥料・堆肥・糞尿など。」

ということが記されています。要約すると、肥料とは、「農作物が成長するために必要な栄養素」になるとといったところでしょうか。

小学校の理科の授業で習いましたが、植物は水と二酸化炭素から炭水化物をつくりだし、それ以外に必要な栄養素は根から吸収します。

この時に必要な栄養素が土になければ、植物は成長することが出来ないので肥料が必要になるのですが、山林などに生えている植物は肥料もないのに、自然にすくすくと育っていきます。

自然の山林などでは、動物の排泄物昆虫の死骸落ち葉などが腐るなどして、土の養分となっていきます。

これに対して、一般農法などによる畝づくりでは、効率を求めて整地するので、この様な自然サイクルは出来上がらず、土がどんどん痩せていってしまうので、肥料が必要になってきます。

逆に考えれば、自然の状態に近づけてあげれば肥料なんかいらないということですね!

これらのことを総称して、自然農法時の土づくりで大切なことは「自然の状態に近づける」「むやみやたらに整地しない」ということといえます。

肥料を使わずに土を肥やすには “微生物” が必要不可欠

手つかずの山林などの自然環境は、植物が育つための微生物が必ず共存しています。

微生物とは、顕微鏡でなければみえないような微細な生物のことで、細菌や酵母などのことをいいます。簡単にいうと「」のことですね。

この「菌」が土づくり(土を肥やす)ために一役も二役も買ってくれているのですが、農産物を育てる場合には、大きく別けて以下の3つのことが挙げられます。

土壌環境を整えてくれる

地球上には少なく見積もっても、1000万種類の微生物が存在していると言われています。

土壌には、土壌菌といわれる元々棲みついていた微生物が多種多様に存在し、互いに阻害しあうものもあれば、微生物同士がうまく共存するモノもあります。(存在している微生物の0.1%も研究が進んでいないので、すべての微生物に関してはまだまだ未知な部分が多いといわれている。)

微生物同士の共存に加えて、農産物などの植物とも共存共生する微生物も存在し、この多様性が増えれば増えるほど、土壌環境を良好なモノへと変化させてくれます。

微生物を含めて色んなことが織り交ざりながら土壌環境は整っていくので、多少変化に要する時間が必要ですが、微生物のおかげで、土壌環境はゆっくりながらも確実に土壌環境を整えてくれます!

微生物と植物のギブ&テイクによる共存共生

農産物などの植物は、根から水・酸素・栄養素を吸収して成長していきますが、成長する為に吸収するだけでなく、根から生成物の排出も同時に行っていきます。

土壌菌などの微生物は、この根からでる生成物を好むものもいて、この植物のから排出された生成物を分解してできた生成物を、植物に必要な栄養分として、植物の根から吸収されていきます。

まさに、微生物と植物のギブ&テイクによる共存共生が土壌を通して行われているのです。

農産物の病気を護る

地球上には1000万種類以上の微生物が存在するので、中には植物を病気にさせてしまう微生物も存在します。

ただ、農業での土づくりに必要な微生物の中には、農産物を病気にさせる微生物から、農産物を護ってくれるものもいます。

代表的なモノは植物内に共存している、真菌や細菌の一種である「エンドファイト」と呼ばれるもので、農産物が害虫や微生物により病気になると、対抗する物質をつくりだし、害虫や病気に対する耐性を強化してくれます。

細菌の研究では、このエンドファイトは耐性をつくるだけでなく、農産物の成長を促進する働きもあるとされ、研究が進められています。

土づくりに活躍する微生物ベスト4

土づくり 土の中の菌

自然農法の様な、無農薬無肥料で農業を進めていく上で、微生物は必須だということは解りましたが、実際にどんな微生物が、土づくりのために活躍してくれるのかを抑えておきましょう。

色んな種類がありますが、ベスト4と称して代表的なものをピックアップしてみました。

糸状菌(しじょうきん)

糸状の菌糸で生活する微生物の総称で、一般的な言葉で表すと「カビ」です。

日常生活中の一般的な認識でいくと「カビ」はカラダにとって良いイメージではないのと同じで、植物を病気にしてしまうカビもありますが、土づくりに必要な他の微生物のサポートになる働きも持っています。

糸状菌は、デンプンを糖に変えたり、酵素などの有機物を分解する働きをもっていますが、この分解した糖などが、他の微生物のエサとなり、土づくりに必要な他の微生物の増殖のサポートをしてくれます。

放線菌(ほうせんきん)

糸状菌のように放射状に菌糸が生育して、先端部分に胞子を形成している菌です。

最も有名な働きとしては、落ち葉などの有機物の分解を担っていますが、害虫予防にも大きな働きをしていて「センチュウ」などの害虫対策として大きなチカラを発揮してくれます。

落ち葉以外にも、カブトムシやクワガタの様な外骨格をもった昆虫などを分解する能力も持っています。

乳酸菌(にゅうさんきん)

乳酸菌といえば「ヤクルト」ですね。人のカラダにおいては、腸内環境を整えてくれるのに非常に有効な菌で、乳酸菌の主な働きは、糖を分解して乳酸を生成することですが、この乳酸は殺菌作用が非常に高く、農作物に害のある雑菌を抑制する働きがあります。

ただ、乳酸の過剰生成により、PH値が高くなりすぎると、土づくりに有用な菌が成育しにくくなってしまうので、バランスが必要な微生物の1つでもあります。

納豆菌(なっとうきん)

和食を食べたことがある日本人なら1度は聞いたことがある「納豆菌」は、田んぼや畑や枯れ草などに生息しています。納豆菌は、熱や乾燥、真空状態、マイナス100度~100度までの低温でも高温でも生きられる最強の菌と言われています。

糸状菌の様にデンプンを糖に分解するので、他の土壌菌の増殖のサポートをしてくれますし、植物ホルモンを生成してくれるので、植物の葉を大きくする働きもあります。

農作物を安定的に生産するのに欠かせない、病気の原因となるカビや、葉っぱを食べるヨトウムシの防除にも大きな効果を発揮してくれます。

自然農法に適したよい土とは

微生物の活躍により、土は肥えてよい土になっていきますが、よい土になったかどうかを見極めるのは

  • 掘った時に白っぽい菌がいる
  • 土の柔らかさ

の2つが見極めになります。

白っぽい微生物(糸状菌・放線菌)がいるということは、他の微生物もたくさん生息していることになるので、微生物たっぷりのよい土である可能性が高く、この様なよく肥えた土は、本当に柔らかくて、手で簡単に掘れますし、棒を突き刺したら、大して力をいれてないのにずぶずぶと突き刺すことが可能です。

ここまでの土になっていれば、農産物の根の発達がよくなるので、成長スピードや成長力がアップしたり、えぐみの元となる硝酸態窒素が農産物に残りにくくしてくれます。

地域や環境によっては、少し時間がかかるかもしれませんが、自然農法を行っていくには、自然の流れに任せるしかないので、土づくりは少し気長にみていきましょう!

化学肥料を使わずに土を肥やしてみよう

自然農法 竹チップ アップ

肥料を使わずに土をつくっていく(肥やしていく)には、微生物が必要不可欠だということを解説してきましたが、実際に土をつくっていく方法を解説していきます。

その土地の気候や環境によって多少変わってきますが、基本的には微生物が好む環境をつくってあげるということがポイントで、土づくりの際にもっとも気をつけないことは「土壌のペーハー値」です。

微生物の種類にもよりますが、酸性が強すぎたり、アルカリ性が強すぎたりなどと偏ってしまうと、微生物は増殖しませんし、生息自体も不可能になってしまいます。(微生物の最適ペーハー値は6前後くらいの弱酸性が目安です。)

地域にもよりますが、基本的に日本の土壌は酸性よりなので、相当変なことをしていない限りはそこまで気にすることはないですが、以下の様な場合は注意しましょう。

  • 雨量が多い 土の中野のアルカリ成分が雨で流されやすい。
  • 雨の質が悪い いわゆる酸性雨というもの。
  • 元々化学肥料を使っていた土地 化学肥料の多くは酸性肥料で残留している可能性がある。

ペーハー測定器は、Amazonなどで3000円くらいで売っているので、土をつくる前に購入して、測定しておくことがおすすめです。

ペーハー値が酸性やアルカリ性に偏ってないなければ、土を肥やせる可能性が高くなるので、微生物の大好物である有機物を与えてあげましょう。

微生物は日差しに弱いものが多いので、日差しが届かないくらい土を覆うことがポイントです!

有機物は以下のモノがおすすめ。

  • 木のチップ
  • 竹のチップ
  • 枯れ草
  • 枯れ葉

これらのモノを積み上げて放置しておくと、微生物がどんどん繁殖し、土が肥えていきます。

土壌環境や気候によって、肥えた土が出来る時間は異なりますが、よっぽどのことがない限りこの方法で、肥料を一切使わずに肥えた土が出来ていきます。

肥えた土が出来上がったら畝をつくり、畝の上にさらに有機物を被せていきましょう。よく肥えた土で農作物を育てていっても、農産物と土が馴染むまでに多少時間を要しますが、有機物を被せることによって、馴染みやすくなることがよくあります。

農産物は育っていく過程で、根から水素イオンを放出し、土は酸性に傾いていきやすくなるので、その様な場合は、卵の殻や貝殻を砕いて撒いていくと、土を弱酸性を保つことが出来るので、土づくりの時や農産物を育てた後も、ペーハー値を気にしながら対策をとっていきましょう。

以下の動画にて、先生の土づくり法をアップしてますので、ぜひ参考にしてみてください。

これくらいのことをやっておけば、カラダに有害な化学肥料を使わなくても、簡単に自然農法用の土づくりが可能になっていきます!

まとめ

自然農法 土づくり ありのままの自然

自然農法の土づくりは、ありのままの自然を活用することが大切です。

私の考えですが、肥料の歴史は、人のエゴ(もっと生産量を増やしたいとか、もっとしっかり実らせたいなど。)によって進み、ある一定期間からは、もっと原価を安くしたいとか、もっと使い勝手をよくしたいなどのエゴに切り替わって、今日の化学肥料があるのだと思います。(利権ももちろんあります。)

なんでもそうですが、エゴを追求しすぎると必ず弊害がでてきます。化学肥料の場合は、まさに健康面での弊害です。

自然農法の土づくりでは、肥料は自然にあるものなのでコストはかかりませんし、生態系を壊したり、健康を害することもありません。

ただ土が出来るまでの一定期間は我慢が必要ということだけのリスクです。そこをクリアしてしまえば、自分自身や大切な家族や仲間の健康を護る農作物が出来るようになります。

ぜひ、自然農法の土づくりにチャレンジして、一緒に日本の農業を取り戻していきましょう。

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n+編集長

やまだ

ライター

山口県出身で、現在は大阪・山口を拠点に“健康”と“教育”をテーマに、トレーニングジム・健康サロン・児童福祉施設・自然農畑を運営。 自身の身体不調をきっかけに現代医療に見切りをつけ、補完療法や自然療法を軸として「効果的」「簡単」「安価」をキーワードに、誰でも気軽に出来る健康実践法を追求し続けている。心許せる信頼出来る各分野のプロフェッショナルにサポートしてもらいながら「人生おもいっきり愉しむ計画!」を稼働中。