n+編集長
やまだ
ライター
山口県出身で、現在は大阪・山口を拠点に“健康”と“教育”をテーマに、トレーニングジム・健康サロン・児童福祉施設・自然農畑を運営。 自身の身体不調をきっかけに現代医療に見切りをつけ、補完療法や自然療法を軸として「効果的」「簡単」「安価」をキーワードに、誰でも気軽に出来る健康実践法を追求し続けている。心許せる信頼出来る各分野のプロフェッショナルにサポートしてもらいながら「人生おもいっきり愉しむ計画!」を稼働中。
適材適所という言葉がありますが、これは日本家屋や寺社など伝統的建造物の建築現場での木材の使い分けが語源といわれています。
ものごとには必ず理(ことわり)がありますが、適材適所に似た農業界の理といえば「適地適作」です。
地産地消にも繋がっていく言葉ですが、流通が発達した今だからこそ、先人から脈々と受け継がれてきた、とても理にかなった適地適作を見直す時期かもしれませんので、今回は、植え付けをする際にもっとも重要になる適地適作について掘り下げてご紹介していきます。
目次
適地適作を簡単に説明すると、その土地の環境や気候、土壌の状態や特性など、その土地の自然環境にとって、もっとも適した農作物を選んで栽培することを指します。
日本での適地適作の考え方で、もっとも重要視されているのは「土壌」と「土性」です。
土壌とは一般的には土ですが、陸地と水面から計測して2メートル以内の蓄積物を指し、この土壌は地形や地域によって多種多様で、見た目から特性まで色々なものがあります。
土壌の種類として有名なものは…
などがあります。
土性とは一般的には粘土をどれだけ含んでいるかによって分類され、分類としては…
などがあります。
土壌菌の種類や活性化具合が、農作物の成長に大きく影響していると認識されていますが、日本の適地適作の観点からいくと、土壌や土性の種類の方が作物の育ち方への影響が大きいとされています。
例えば、通気性や保水力が高く、柔らかい黒ボク土がジャガイモの生産に適していたり、排水性が高く水分や栄養素のほとんどない砂土はらっきょうの生産に適しています。
日本には地域ごとの名産がありますが、土壌や土性に適した作物が育てられていることが多くあり、これが日本の適地適作の考えに沿ったものになります。
農産物の輸出額1位で、世界の食糧庫と呼ばれるアメリカは、圧倒的規模と超合理主義な適地適作により、農業大国ともいえる大きな成果をあげています。
アメリカの適地適作を表す代表的なものは…
アメリカの適地適作の考え方には、大農法という考え方もセットでついていて、環境に合った農作物をとにかく効率的に大量生産するというものです。
日本で例えると北海道の様な感じで、広大な耕作地一面がじゃがいも畑だったり、とうもろこし畑だったり。
そんな北海道を遥かに超える規模を誇るのがアメリカの適地適作といった感じです。
映画や興行、ビジネスやお金のみならず、アメリカは農業もスケール大で超合理的に行っていますね!
日本で行われている99%の農法では、基本的には土壌や土性を基準に適地適作を行っています。
自然農法でも、土壌や土性もある程度の基準にはしていますが、基準にしている比率は自然農法家によってまちまちな様に感じており、草が生えてる土なら作物はなんでも育つという考えの方らから、ある程度土壌や土性の性質を見極めながら作物を植える方まで十人十色です。
私たちの畑では、その土地が元々田んぼだったのか、真砂土だったのかなど、適地適作の観点からどんな作物を植えるかを考えたりもします。
ですが、教科書通りにはせずに、土壌や土性に合わない農作物を試しに植えてみて
「やっぱり無理だったか。」
と失敗したり
「駄目だと思ったけど育つし、逆に美味しい。」
などと大きな成功をしたりなど、適地適作を完全に無視した様なこともしています。
農作物の特性と土壌や土性の特性をマッチさせる適地適作の理論はもちろん重要なものですが、自然農法は自然と共生する農業で、自然の力を活用(理論的にこうですということはいえないですが)して、土壌や土性とマッチしていない作物を順応させることが出来るという感覚があります。
自然農法=自由農法 で、失敗も成功も予想を超えることが起こりうるので、それが楽しみの1つでもあります!
適地適作で重要なのは「土壌」と「土性」だということを先ほど述べましたが、気候も大きな要因の1つになっています。
日本の気候にあった農産物を1つだけ選ぶとすれば、ほとんどの方が「コメ」と答えるはずですが、コメがこれほどまで稲作文化として日本に根付いた理由は、コメが日本原産であり、日本の気候に合っているからです。
原産であるということは、元々そこにあったということで、野生で勝手に育っていたというものですから、今でいうと雑草と同じイメージです。(雑草は何もしなくても勝手に育ちます。)
気候風土に合っているからこそ原産になっていて、適地適作の面から考えると、原産の農作物を栽培するということは、実はもっとも理に叶った適地適作になり、だからこそ日本の農家のほとんどが稲作農家になっているといえます。
その観点からみると、コメ以外の農作物でも、日本の気候に合った日本原産の農産物を育てれば、もっとも理にかなった適地適作になるので、そういったモノを育てたらいいという考えに至るのですが、残念ながら現在の一般流通している農作物の中で、日本原産のものといえば、
くらいで、どれもサブ的な農作物ばかりです。(もちろんサブとはいえ、ニーズのある農作物なので、栽培するのに問題はまったくありません。)
日本原産の農作物であれば日本の気候にマッチしているので、さほど労せず栽培することが可能ですが、日本原産でない農作物育てるには多少の労力が必要になってしまいます。
だからこそ「土壌」と「土性」が非常に重要になってくるのです。
日本の気候にマッチしている日本原産の農産物や、土壌や土性にマッチしている農産物を育てるメリットは「育ちやすい」「本来の農産物」といったところがあげられます。
育ちにくいものを無理に育てようとすると、育たなかったり虫にくわれたり、病気にかかったりしてしまいます。
そうなると、合成農薬や化学肥料をつかって育てないといけなくなってしまう・・・これが現在の一般農法で起きてしまっていることです。
近年の農薬や肥料は安全なモノを使っているなどの情報がありますが、農薬が使用されている野菜と無農薬の野菜が同じ値段で売っていれば、なんの迷いもなく無意識的に無農薬の野菜を選びますよね。
農薬が身体に良くないことは、ほとんどの方が知っていますし、環境によくないことも皆が知っていることです。
肥料を使うと、硝酸態窒素というカラダによくない物質が野菜の中に多く含まれてしまい、健康的に問題がありますし、肥料を使った野菜は栄養価がかなり低くなっているともされています。
一説によると、農薬を使った米はそうでない米に比べて栄養価が50分の1程度しかないと言われています!
これらのことから、自然の摂理に従って土壌や土性、気候の特性にならって適地適作を行うことによって、人にも環境にも優しい、野菜や農産物にも寄り添った農業が可能になります。
すべてのことには必ず表と裏があるように、メリットとデメリットもあります。どの方向からみるかによって、メリットとデメリットは変わってきますが、一般的な視点から適地適作のメリットとデメリットをみていきましょう。
適地適作のメリットは以下があげられます…
適地適作のデメリットは以下があげられます…
自然農法をする時は、特に適地適作が有効で、メリットばかりが際立ちますが、やはり最大のデメリットは、育てる農作物が限られてしまう可能性が高いということです。
家族で消費する分だけを生産する農業、農作物を販売するビジネスとしての農業でも同じことですが、農業を始めるなら適地適作がおすすめです。
その理由はやはり、農作物の育ちやすさで、農作物は気候や風土や環境によって、育ち具合がまったく違ったものになります。
極論をいうと、北海道でさとうきびは育ちませんし、沖縄で小豆は育ちません。生産地域や土の種類に適した農産物を育てるということは、農業の基本中の基本ともいえます。
特に自然農法の様に1から土づくりをしないといけない場合は、適地適作だったとしても最初の数年はうまく育たないことがよくあり、農作物がその土地に適していないと、うまく育たない可能性がさらに高くなってしまいます。
農業を始めたばかりで、農作物が育たないと、心が折れたり、モチベーションが著しく低下してしまいやすいので、農業を始めようとする時は、適地適作が断然おすすめです。
適地適作を行っていきたい方のヒントとなる内容をいくつかまとめてみましたので、ぜひ参考にしてみてください。
各都道府県によって、よっぽどのことがない限り、農産物生産量上位にきているものが育ち易い野菜だといえます。
各都道府県ごとに生産量が高い主要野菜をまとめてみましたので、生産する地域に該当するものを1つの参考にしてみてください。
地域 | 都道府県 | 生産量の多い野菜 |
---|---|---|
北海道・東北 | 北海道 | アスパラガス・かぼちゃ・じゃがいも・大根・玉ねぎ・とうもろこし・にんじん・ブロッコリー |
青森県 | かぶ・ごぼう・大根・にんじん・にんにく | |
岩手県 | しいたけ・ズッキーニ・なめこ・ピーマン・松茸・わさび | |
宮城県 | せり・つるむらさき・しめじ・そら豆・モロヘイヤ | |
秋田県 | うど・しいたけ・せり・なめこ・みょうが | |
山形県 | 枝豆・わらび・なめこ・マッシュルーム・みょうが | |
福島県 | さやいんげん・さやえんどう・つるむらさき・きゅうり | |
関東 | 茨城県 | カリフラワー・小松菜・さつまいも・ごぼう・チンゲン菜・白菜・ピーマン・水菜・れんこん |
栃木県 | うど・かんぴょう・とうがらし・にら | |
群馬県 | うど・枝豆・キャベツ・きゅうり・白菜・ふき・なす・ほうれん草・レタス・モロヘイヤ | |
埼玉県 | 枝豆・かぶ・きゅうり・小松菜・さといも・ねぎ・ブロッコリー・ほうれん草 | |
千葉県 | かぶ・さやいんげん・里芋・春菊・なばな・ねぎ・ほうれん草・マッシュルーム・みつば | |
東京度 | 小松菜・唐辛子・なばな・わさび | |
神奈川県 | 大根・冬瓜・モロヘイヤ | |
中部 | 新潟県 | えのきだけ・エリンギ・きくらげ・しめじ・なばな・ひらたけ・まいたけ |
富山県 | 玉ねぎ・みょうが | |
石川県 | くわい・松茸 | |
福井県 | 里芋・まいたけ・らっきょう | |
山梨県 | うり・クレソン・とうもろこし | |
長野県 | えのきだけ・エリンギ・しめじ・ズッキーニ・セロリ・パセリ・松茸・わさび・レタス | |
岐阜県 | きくらげ・ほうれん草・トマト・モロヘイヤ | |
静岡県 | エシャレット・クレソン・シソ・セロリ・チンゲン菜・パセリ・まいたけ・ルッコラ・わさび | |
愛知県 | キャベツ・さやえんどう・シソ・チンゲン菜・冬瓜・トマト・ふき・ブロッコリー・みつば | |
近畿 | 三重県 | シソ・ひらたけ・なばな |
滋賀県 | かぶ・かんぴょう・水菜 | |
京都府 | かぶ・くわい・たけのこ・松茸・水菜 | |
大阪府 | うり・かいわれ大根・くわい・グリンピース・春菊・みつば | |
兵庫県 | 春菊・玉ねぎ・とうがらし・水菜・レタス | |
奈良県 | グリンピース・ミョウガ・ルッコラ | |
和歌山県 | グリンピース・クレソン・さやえんどう・ししとう・冬瓜・松茸 | |
中国 | 鳥取県 | エシャロット・エリンギ・なめこ・らっきょう |
島根県 | エリンギ・わさび | |
岡山県 | 冬瓜・松茸・マッシュルーム | |
広島県 | さやえんどう・くわい | |
山口県 | わさび・らっきょう・れんこん | |
四国 | 徳島県 | うり・カリフラワー・さつまいも・しいたけ・なばな・にんじん・ブロッコリー・れんこん |
香川県 | エリンギ・しめじ・たけのこ・なばな・パセリ・ブロッコリー・にんにく | |
愛媛県 | さといも・そら豆 | |
高知県 | オクラ・ししとう・生姜・せり・なす・にら・ピーマン・わらび・みょうが | |
九州・沖縄 | 福岡県 | うり・かいわれ大根・小松菜・セロリ・たけのこ・とうがらし・なす・ひらたけ・ルッコラ |
佐賀県 | アスパラガス・玉ねぎ・モロヘイヤ・れんこん・わさび | |
長崎県 | エリンギ・じゃがいも・スナップエンドウ・玉ねぎ・にんじん | |
熊本県 | アスパラガス・オクラ・カリフラワー・きくらげ・生姜・たけのこ・トマト・なす・なばな | |
大分県 | かいわれ大根・クレソン・シソ・せり・とうがらし・わさび | |
宮崎県 | かぼちゃ・きゅうり・ごぼう・ゴーヤ・さといも・シソ・生姜・ししとう・ピーマン・らっきょう | |
鹿児島県 | オクラ・かぼちゃ・グリンピース・さつまいも・さやえんどう・じゃがいも・そら豆・らっきょう | |
沖縄県 | オクラ・クレソン・ゴーヤ・さやいんげん・冬瓜・モロヘイヤ・らっきょう |
上記各都道府県主要野菜にランクインしている農産物はほとんどが、一般農法と言われる手法で生産された農作物なので、農薬や肥料をつかった栽培方法になります。
一般農法で育てるのであれば、生産量上位ランクの野菜を育てるのは適地適作といえるので、農協等が推奨している方法をそのまま行えば、大抵の場合は野菜が育ってくれます。
一般農法と対照的な自然農法の場合は、育つ野菜の見極め方が非常に難しいのが実状ですし、特に始めたばかりの時は土が肥えてないので、野菜が成長するのに必要な養分がしっかりと備わっていません。そんな事情から、土がしっかり肥えてなくても育つ以下の野菜で、且つ適地適作となる、その土地での生産量の多い野菜であれば、野菜が育つ可能性が高くなります。
野菜が育たないのはモチベーションに影響するので、育ちやすいモノから育てるのがおすすめです!
「むら」の畑はとにかく実験の毎日なので、適地適作はそこまで重要視していません。
だからたくさんの失敗もしてきましたし、失敗をすることでたくさんのことを学んできました。
正直なところ自然の力は凄いです。
相当な熟練者でない限り、人の思考で太刀打ちするにはかなり難しいことに気づいたので、最近は直観(感性)で植えたいものを植える様になってきました。
植えたいものを植えることによって、うまく成長した時にはより嬉しい気持ちになりますし、うまく育たなかった時の精神的なダメージは、狙って植えた時よりも少なくてすみます。
少しスピリチュアル的にはなりますが、畑にずっといると、なんとなくこうすると上手くいくかなという直観力がでてくるので、頭で考えるよりもそっちの方が当たっている感覚もありますね。伝統工芸の職人さんが持っている感覚のイメージです!
直観以外では、土づくりの工夫を行ったり、他の野菜との植え合わせによって、少しでも農作物が育ちやすい環境づくりに取り組んでいます。
植え合わせをすると、思った以上に育ちがよくなるので、ぜひ以下の記事でコンパニオンプランツのことを知っておいてください。
>>コンパニオンプランツ一覧 植え合わせの良いもの・悪いものをご紹介<<
適地適作は当たり前のことなのですが、案外盲点になりやすい部分でもあります。
農業は、適地適作だけを気をつければいいという様なものでもありませんが、農作物の特性からあまりにもかけ離れた環境では、どんなに良い土でも農作物は育たないので、農業をはじめる基本要素の1つとして、知っておいてください。
自然農法の場合は、ある意味自由農法なので、植えるモノも自由で、自由だからこそ、工夫やアイデアや感性が大事になってきます。いっけん大変そうですが、だからこその面白さがあるので、ぜひ楽しみながら農業にチャレンジしてみましょう。
n+編集長
やまだ
ライター
山口県出身で、現在は大阪・山口を拠点に“健康”と“教育”をテーマに、トレーニングジム・健康サロン・児童福祉施設・自然農畑を運営。 自身の身体不調をきっかけに現代医療に見切りをつけ、補完療法や自然療法を軸として「効果的」「簡単」「安価」をキーワードに、誰でも気軽に出来る健康実践法を追求し続けている。心許せる信頼出来る各分野のプロフェッショナルにサポートしてもらいながら「人生おもいっきり愉しむ計画!」を稼働中。